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無慈悲なくーなな

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□ 短編 □

時の悪戯-中篇-

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Day 056 - Photo365 - Clock / UnknownNet Photography


「ーおい、アンタ…」

心地良い夢の中で、相川の声が聞こえた気がした。
たとえ眠っていても、しっかり心と身体に刻まれているその声が、耳から満ちていく…。

「……ん、」

七王の身体をすっぽりと包み込むソファーは、身じろぎしてもまだ余裕がある。
ソファーは、仮に久遠とあれやこれやでもつれ込んだとしても、その大きさ故(別にそれを想定したわけではないが、姉の君子から貰ったのだ。それに対し時々まさか…?と思わないでもない。by七王談)特に支障はなかった。

夢の中でも相川に会えるなら、こんなに良いことはない。七王はそう思い、幸せな眠りをもっと貪ろうとした。
しかし――

「…おい、寝るな」

今の久遠からしたら少々乱暴ではと言えるような言葉遣いに、七王は夢うつつに「まるで昔の相川みたいだ…」と、思った。

「起きて下さい…七王さん…」と、今の相川ならきっと言うだろう。
昔の相川にはない、自分への愛情が言葉使いや声のトーンに溢れているはずだ。寝る前に色々考えていたから、それでこんな幻聴めいた声が聞こえるのだろう。
そう思い七王はまた寝に入ろうとしたが、それはあえなく破られた。

「…おい、白羽さん…」

――白羽さん……!?

七王はそのありえない掛け声に、一瞬にして意識が覚醒した。

「…っ相川…!?」

七王は慌てて起き上がると、起き抜けに目を彷徨わせた。

すると確かに声の主――〝相川久遠˝がそこにいた。
ソファーのすぐ傍で、どこか所在なさげに、そして怪訝そうに突っ立っている。冷たさを感じさせる、疑わし気に細められた目元が、真っ直ぐに七王を射抜いていた。

「…っ…」

七王はその姿を見て、思わず声が詰まる。見覚えがある姿――途端に七王の胸がぎゅっと締め付けられ、不安に騒ぎ出す。今まであたたかかった部屋の温度が、急に2,3度下がったように感じる。身体が硬直したように、動かかなかった。

驚きに見開いた先で目にする姿は、あまりにも過去の゛相川久遠˝と酷似していた。

…そんな馬鹿なことって…、俺まだ寝ぼけてるのか…?

起きた先から、非現実的な目の前の光景に、まだ夢の延長のままではないかと思った。ドクドクと、一気に血の巡りの良くなった心臓の奏でる音が、七王の中でいっぱいになる。

…いや、そうじゃない。今じゃない。
………もしかして、これまでの…〝今まで˝が夢だったんじゃないのか…?

相川と幸運にも想いを通わせて、付き合って、それから一緒に暮らすようになったそんな夢のような過程が、〝夢˝そのものだったのではないか…?

「……っ、ァ……」

そんな…。
自分が勝手に夢見ていただけの『夢の時間』。
本当はそんなことは一切なくて、現実は変わらずに、相川を想って勝手に傷つくだけの時間ばかりだとしたら――

七王が言葉もなくそう混乱していると、

「…わけがわかりません。どういうことか説明してください。…一体ここは?」

と、声をかけてきた。

「…え…、」

まだ何も言えないでいる七王に、久遠はかまわず質問する。

――ここって…?

恐ろしい疑念にとりつかれ、動揺していた七王は、久遠の言葉に改めて周りを見回した。そうして周囲を確認すると、七王の嫌な疑惑はゆるやかに取り払われていく…。

…相川と、2人で築き上げていった空間。

大体の家具は姉の君子からの提供によるものだったが、そうでないものもこの空間には沢山ある。

あれは、相川とお店で選んだ冷蔵庫、それからあの電子レンジも、炊飯器も。
食器棚には、2人で選んだ対のマグカップやお揃いの皿、そしてカーテンやラグ…。
部屋の至る所に、2人で店に足を運び、そして楽しみながら選んでいったものが溢れている。
これから始まる2人の生活に思いを馳せながら、期待に胸をときめがせながら、幸せを描きながら、あれがいい、これが良いと2人で選んだものだ。それらは、幸せな気持ちと嬉しさでいっぱいの象徴だった。

そうして順を追って見て行く度に、その思い出が七王の胸に徐々に落ち着きを取り戻させた。

…相川、確かにここで俺と一緒に居たんだな…。
そして、今も一緒に生活している。

不安に胸元をぎゅっと掴んでいた七王の手から、力が抜けていく。騒がしく早鐘を立てていた心臓も、ゆっくりとリズムが戻って行った。
久遠と一緒に過ごした時が、七王の心許ない危なさを1つ1つ払拭していく…。

七王はほっとすると同時に、
――では何故今の久遠ではない、゛相川久遠˝がここに居る!?
と、今度は別の疑念が一気に襲ってきた。

「あ、相川…、お前、何てここに…?」
「…それを聞きたいのは俺の方です。気が付けば何故かここに居たんですから。…まさか、アンタが俺に何かしたんじゃないですか?」

七王が咄嗟に出した言葉に、久遠は即座にかぶせるように畳み返す。少々苛ついているようだ。
先程と同じで、嫌悪を隠しもせず、ただただ怪訝そうに七王に疑惑の目を向けている。

「…何でだよ。そんなことするかよ」

…正確には過去にしっかり゛ナニ˝かしたんだが。
七王はあえてそれを伏せ、この不確かな現実の久遠は、一体いつの時期だろう?と思った。
七王の存在を既に知っているので、現大学生には違いないが、まだ全く接点のない時期なのか、そうでないのかが知りたい。詳しく聞いてとりあえずは、時系列を整理したいと思った。

まずは状況を把握しねぇとな…。

「…あー、相川、お前弟の永遠君と、うちの帝が知り合いなのは知ってるか?」

その質問に、ピクリと久遠の眉間に皺が寄る。途端に苦虫を嚙みつぶしたような顔になった。

「…ええ、そうみたいですね。…それが何か?」

認めたくはないが、不本意ながら久遠は渋々と返事をする。

その様子に、七王は(あー…もう、うちの帝と永遠君ができ上がった時の相川か…)と思った。
…でも、俺とどうこうなってないみてーだな、たぶん。
あれ以降の反応はどうだったかなんて、嫌でも分かるし、身を持って知っている。

じゃあ、この相川は学内で不穏な俺の噂を聞いて、毛嫌いしている真っ最中の相川久遠か、と思った。それがそうなら、本当は今話すのも同じ空間にいるのも、嫌で仕方がないだろうと理解する。一刻もここを出て、俺の前から立ち去りたいんだろう…なと。

…俺と、その家族周辺に近付くな…と、ピリピリした結界のような包囲網をしいていた時の相川だ。

でも可哀想だが、ここから出すわけにはいかない。
過去の相川を外に解き放てば、今にどう影響するか分からない。混乱をきたすのは間違いない。
それこそ、今の相川が里帰りしている相川家に真っ先に帰ったりしたらとんでもない話だ。
相川が2人――なんて、実際見てみたいし七王には眉唾物だが、そんなことを考えている場合ではない。
七王は浮かんだ考えを振り払うように、頭を軽く振った。

「…いや、別にどうってわけでもねーんだけどさ。……あー…とりあえず、お互いに状況を整理するためにも、お茶でもしねぇ?お前、何か困惑してるみたいだし、そしたらお互いに色々と落ち着くだろうしさ…」

とりあえず、良い考えが浮かぶまで七王は時間稼ぎがしたかった。

「結構です」

だが七王が落としどころを探るための折衷案も、久遠はすぐにそれを拒む。選択の余地はないのだと、ここを1秒でも早く去って、これ以上俺をもう視界には入れたくないのだと、その態度で分かる。ほら、その証拠にもう目を合わせもしない。

「………」

そんな取り付く島もない久遠の態度に、七王の胸がうずく。
過去に嫌という程思い知った、久遠の己に対する脈の無さとつれなさを思い出して…。

「…相変わらずだなぁ、相川は」

…ふぅと、七王は溜息を吐く。
今に始まったことじゃないよなと、七王は一縷の切なさに寂しげな微笑を浮かべた。
今の久遠がこの七王を見たならば、きっと即座に抱き締めただろう。

――やれやれどうするべきか。
頭が固い方ではないが、こんなありえないことは、正直自分の手に余る。
姉の君子なら、構わずにこの状況を楽しみながらも、しっかりと主導権を握るんだろうな。そして変わらない落ち着いたペースで、ありえないことも最後は何とかなると腹をくくっているに違いない。
けれど残念ながら、七王にはそんな心情にはとても到達できそうになかった。

あー…姉貴、この場に姉貴がいればな。
片手で頭を掻き上げながら、うーん…と唸る。
この、猫の毛を逆立てたような警戒心いっぱいの相川をここに引き留める方法、その方法は…?

無茶苦茶な事を言いながらも、女王様然として相手を自分のペースに巻き込み、最後にはしっかりと物事をおさめる、あの手腕が自分にも今すぐ欲しい。

七王がそんなことを思っていると、唐突に久遠が今の状況にそぐわない素っ頓狂な大声を上げた。

「――なッ!何ですか、これは…っ!?…」

あきらかに動揺を示した久遠のその声音に、七王が顔を向けるとそこには、1枚のコルクボードがあった。

「――あ、」

七王はそれを見て、思わずそんな声が出た。
まずい…。

「…っ、こ、これは一体…っ!?」

久遠の晴天の霹靂といったような動揺ぶりは、個人的になかなか面白いものがあったが、その反応になるのは無理もないとも思う。

…何故なら、それは久遠と七王、2人の思い出の証でもあったから――。

「いや、それはな…相川、何て言うか…」

もう誤魔化しようがないのだが、七王は何と言っていいのか分からなくてもごもごと口ごもる。

久遠が信じられないものを見る目で、コルクボードにぎょっとして目をむいている。
かつてない衝撃を受けた久遠は、よく見れば困惑のあまり、身体が小刻みに震えていた。

…や、やべぇ、どんどん状況が悪化していっている。

久遠が凝視する、壁に設置されたそのコルクボードには、久遠と七王が仲良さげに寄り添って微笑み合う写真が数枚、飾られていた。2人で旅行に行った時に撮った写真や、それから一緒に住む記念の初日に、この部屋で2人で撮ったものなどもある。

「ーなっ、アンタこれはどういうことだ…っ!?」

久遠が鬼気迫る表情で今すぐ説明しろと、七王に大股で詰め寄ってくる。

…おいおい、こいつ青ざめながら、顔に怒りマーク何個も浮かべてるよ…はは、器用だな…。

七王はそんなとんちんかんな事を思いながら、どうするべきか打開策に悩むのだった。

《続く→》
gate- free premade background
gate- free premade background / Eddi van W.
前篇後編で終わらなかったので中編に
次はR18で終わらせます。

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