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無慈悲なくーなな

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□ 短編 □

時の悪戯-前篇-

Clocks
Clocks / amseaman


うつらうつらと、七王は気持ちのいい昼下がりのある日、ソファーの上でゆっくりとくつろいでいた。久しぶりに休日を1人で過ごしている。
ちなみに久遠は、現在相川家に軽く帰省中だ。夜には帰ってくる予定になっていた。
上下ラフな格好で、七王はクッションを抱えてのんびりと天井を眺めていた。

大好きな相川と同じ空間で毎日を過ごしているーそんな夢のような日々。
俺はたまにこうして1人の時間に、その幸せを噛みしめてじっくりとひたる。
どんなにニヤニヤ、ニマニマしても大丈夫。
誰にも気持ち悪がられることなんてないから、気兼ねなくこの幸せを反芻できるのだ。
ぎゅっとクッションを抱き締めて、時に乙女のように身をくねらせて悶えながら陶酔したって、今なら何でもOKだ。
(仮に白羽家でこれをやってのけたなら、帝の絶対零度の軽蔑がすぐさま飛んで来るだろう。頭がおかしいとか最高に気持ち悪いとか言い出すのが目に見えている。…全くアイツは常々、たった一人のこの麗しい兄に対する尊敬の欠如がはなはだしい。また折を見て教育&ちょっかい出してやらねぇとな…)

ふと思うが、俺を親の仇のように毛嫌いしていた昔の相川なら、今の状況は考えられないことだと思う。俺と先では同棲するなんてことは。
…まぁそれは過去の俺にも言えることだけど。

ありえない話だけど、この状況を昔の相川が知ったらどう思うんだろうな。
たちまち反応が脳裏に浮かぶ。眉間にこれ以上はないほど皺を寄せて、言葉を詰まらせながらきっと「そんなことはありえません…!」と強く否定するだろう。
悪夢を見ているような強張った表情で、それこそ俺を全身で威嚇する相川が思い浮かぶ。

…ふふっと想像したイメージに笑みをこぼしながらも、やはり些少ながら胸が締まる感覚を覚えた。
今の自分からしたら何てことはないはずなのだが、当時の相川の自分への態度は「拒絶」そのものだったからだ。

アイツ、ほんと取りつく島なかったよなー。ハリネズミみたいにつんけんしちゃって。そんなアイツも可愛いと言えば可愛いが。
だって嫌いな人間と関わりたくないならば、その場は何気なく受け流して反応しないことだ。そうやってみんな苦手な人間に無駄にエネルギーを使うことなく、距離を保つ。スルーに徹するのが1番だ。

なのに相川は反応しないという選択肢を選ばずに、いちいち俺の言動に真面目に応えたりしてた。可愛い奴…。
けどやっぱあの時はきつかったなー。メンタルがお世辞にも強くない(癪だが、帝に言わせると変態のくせに繊細だから余計に始末が悪いんだとか)俺には風当たりがきつくて、傷ついてばかりだった。
だからこそ、その気持ちを持て余して暴走したあげくにあんな行為に走ったわけだが――。

自分の気持ちしか考えてなくて突っ走って、相川には本当に悪かったと思う。
けれども、その行為を発端として今の未来があるのだから、人生どう転ぶか分からないものだ。結果オーライだからそれで良かったのだと言えばそれまでだが、あまりにも無謀な事をやってのけた。冷静に考えると嫌がる相手に行為を強要したのだから立派な犯罪だよな…と、今思い出しても肝が冷える。
何にせよ、相川の度量の大きさと鋭い感知能力により、それら全てをカバーされたのは間違いない。

そんな男に全力で受け止められて、愛されて日々満たされている。
これは夢か?いや夢じゃない。現実だ。その証拠に、身体の奥に昨夜の名残がまだ感じられる…。めいっぱい擦られた所がまだその感触を覚えていた。ここに、相川は確かにいたのだ。
身体は心地いい疲労感で、愛された喜びに占められていた。


七王は窓から差し込むあたたかな日差しの中、目を閉じてすうっと息を吸い込む。
鼻孔に、観葉植物や雑誌、ソファーや床の木の香り、部屋にある雑多なもので構成されたそれらに混じって、かすかに相川の匂いを感じた。
七王にとって、それこそがこの空間の、生活の匂いだ。傍にいなくても、相川を感じられた。

同じ空間で息を吸うだけで幸せでたまらなくなるなんて、ティーンのような初心な恋を自分が経験するとは思わなかった。
欲を解消するためにその場の相手とセックスで楽しみ、割り切った適度な大人の付き合いで軽やかに人の波を渡っていく。心も身体も思いのままに器用に。そして誰にも縛られず、自由を謳歌する。
深い付き合いなんてわずらわしいと一定の距離を保ったままで、するりと通り過ぎる。お手の物だ。
踏み込むとか踏み込ませるなんて、ただ面倒くさかった。

自分には浅い都会の付き合いが性に合っているのだ。昼よりも、夜の喧騒は馴染み深いものだった。なのに、どこかその夜が物悲しく思える時があって――。そんな時は肌を合わせさえすれば、気になることはなかった。いくらでも誤魔化しはきいた。
上手にできていると思っていた。
こんなふうに振る舞えるのは、自分をコントロールできるている大人の証拠だと。自分で自分を器用にかじ取りできているのだと。まだ二十歳そこそこの年齢で、自分はそこら辺の奴より全然大人だなと本気で思っていた。

馬鹿だな…俺。
過去に傷付いた心をなかったものとして隠し、欲と寂しさを紛らわせるために人肌を求めては、一夜の遊びに何年も身を投じていたなんて。

愛されるということが本当はどんなものか分かっていなかった。
身も心も明け渡して、奥の奥まで踏み込ませ、食い尽くされるように愛される喜び。満たされては飢餓感をすぐに覚え、足りないと求めて身も世もなく相手に縋り付く。もっと、もっとと。
互いに嵩を増して求め合い、ありったけのものを捧げ合っては、また奪い尽くす。昨日よりは今日、今日よりは明日、それが途切れることなく延々と続いていくのだ。

そんな喜びを今まで知らなかった。

…大好きだぜ、相川。こんなにも俺の心を占める人間は、この世にお前ひとりだ。

カチリと、時計の針の音が室内に静かに響く。
2人で選んだ時計が、精細に穏やかに時を刻んだ。

そうして秒針が何周もしていくうちに、七王はいつの間にかソファーに深く身を沈めていた――。

《続く→》

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Clocks / tehusagent
※超短編パラレルのつもりで書いてます、今のところ。(変更の可能性あり)


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