FC2ブログ
 
 

無慈悲なくーなな

□ スポンサー広告 □

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

拍手、頂けましたらとても励みになります♡byくーなな⇒ 
*    *    *

Information

□ 短編 □

君子様のお便り②

3266570323_b1edf9609e_z.jpg
French Stationery / bluebirdsandteapots


「あ~~腰いてぇ……」

七王は大きなローソファーに身を横たえ、腰をさすりながらぼやいた。
先日久遠に酷使されたのが、やはりどうにも七王の躰にこたえていたのだ。

「…あら、大変ね」

こともなげにそう言ったのは、元凶の君子だった。
部屋のテーブルで、高価なティーカップを美しい指先で優雅に傾けながら、七王を見て微笑む。弟と同じく艶麗で、そして気品を高らかに纏わせた特別なオーラを今日も放っていた。

「…姉貴、元はと言えばこれは姉貴に原因がおおいにあるんだぜ」

七王は悪びれない姉の君子を見て、少々口を尖らせながらそう漏らす。
あの独占欲の塊だと言っていい相川に、あんな内容の手紙を送ったらどうなるかなんて明白だ。
…全く、姉貴はそこらへん分かってやってるのか、面白がって茶々をいれてるのか、それともただその時の衝動で何となくやってしまったのか、よく分かんねーよな。
七王は心の中でそう思った。

「普段、運動不足なのがたたってるんじゃないですか。それとももう老化ですか?こんな昼間からだらしないですね…」

帝が厚い本を読みながら、視界の隅にうつる兄に遠慮のない言葉を投げかける。

「あー?麗しのお兄様に向かって何か言ったか、帝ぉ?たまにしか会えないお兄様をもっと労われよな。こうしてわざわざ顔見せに里帰りしてんだから感謝しろよ」


そう、七王は姉弟3人で居住する白羽家で、昼間からゆっくりとくつろいでいたのだ。充分な広さを誇るそのリビングで、自分なりの時をそれぞれが過ごしていた。

「…それとも甘えたい気持ちを押さえてツンデレを発揮してんのか?そうか、俺がいなくて寂しかっただろ?帝」

七王が両手を広げて、抱き締めてやるよ?と言わんばかりに帝を手招きする。腰が痛いにも関わらず、ニヤニヤとした人の悪い表情で
帝を煽ることには手を抜かない七王だった。

それをちらりと一瞥し、さも嫌そうに眉をしかめると、ふうっと帝は呆れた溜息をついた。読んでいた本をぱたりと閉じると、瞬時に軽蔑の面差しを七王に向ける。

「…相変わらずですね、兄さん」

必要以上に相手にしない。とにかく流して、まともに受け取らない。
幼い頃から、この兄にまるで毎日の日課のように数えきれないくらいおちょくられてきた。だからどう対処すれば相手にしなくて済むか、頭ではよく分かっている。
スルーだ、スルーするに限る。
こんな兄に己の貴重な時間をわざわざ割くことはないのだ。
そう、必要最低限の返事だけで構わない。相手は酒の肴にするごとく、からかうことを何よりも楽しんでいるのだからたちが悪い。
だからスルーだ。何ならいっそ同じ空間から退室すればいい。

……だが兄の言葉一つ一つに、確実に神経を逆なでされた心持がどうしても拭えず、その苛立ちを本人にぶつけたい衝動に目をつむることができなかった。
相手は嫌な思いを何もせず、自分だけが苛立たせられた状況がどうにも腹が立つ。一矢報いたい。
単純に言うと、久々にむかついた。

「自分がいなくて俺が寂しいだなんて、どの口が言ってるんですか?むしろうるさいのがいなくなって、毎日至極快適ですよ。勉強も読書も全てが問題なく順調にはかどります。兄さんがいないだけで、こんなにスムーズに過ごせるんだなと改めて実感している日々です。わざわざ帰ってこなくても良いんですよ?」

ことある事に邪魔する存在がいなくなったのだから、当然と言えば当然だった。兄がいなくなるだけで、こんなにも違うとはと帝は当初驚いたものだった。それだけこの兄が自分の邪魔をしていたという証拠だ。

「はっはぁ~強がんなよ。帝ぉ。かえって自分にかまってくれる存在がいなくなって、実は毎日が物足りねーんだろ?スムーズに過ごせすぎてかえって拍子抜けしてるんだろ?…そうか、ふとした瞬間に孤独を埋める存在がいなくなって、胸に穴が開いたような感覚を覚えてる所か。よしよし、可愛い弟め」

七王は帝の反抗めいた皮肉の数々をものともせずにさらっと受け流し、それどころか逆手にとってまた茶化してきた。帝よりも4才年上なのは伊達ではない。ささやかな弟の反逆など、取って返すのはお手の物なのだ。
むしろ帝が反応すること自体に喜びを見出していると言っても過言ではない。

「どういう話の受け取りかたをしてるんですか…!あなたは!」

そんなわけで帝のイラッとした気持ちがまた増幅するばかりだった。

「弟の真の心の声を読み取ったまでだぜ?」

…くっくっくっと、更に帝の神経を逆なでする笑いと共に七王は言った。

結局何を言っても兄の良いように取られるのだから、相手にするだけ損だ。そう分かっているのに言い返さずにいられないのが、己の未熟さをあらわしているようで帝はそれも癪だった。
…この兄が近くにいるだけで、平常心が保てなくなるなんて、帝は認めたくはなかった。

「ーあ、そうだ。今日久しぶりに一緒に寝ようぜ。仲良く兄弟2人枕並べてな」
「結構です!!」

帝は断固断ると即座に拒絶した。
何でこの年になってまで兄と同衾しなければいけない。
しかも必要以上にくっついてくるのだからうっとうしくて邪魔以外の何ものでもない。

「楽しみだよな~~♪兄弟の仲を深める美しき習慣だぜ♪」
腰の痛みも忘れ、七王はうきうきと楽しそうにしている。
「悪しき習慣の間違いです!!!」

…冗談じゃない、本当に。
帝はどっと脱力した。

「そう言うなよ~~兄弟仲良く肌を合わせて一つのベッドで眠るだけだろ?」
「誤解を招くような言い方はやめてください!」
「幼い頃から一緒に寝てるとお互いの身体の成長も分かるしな♪」
「気持ち悪い言い方はやめてください。兄さんが、いつも無理やり俺のベッドに潜り込んでるだけじゃないですか…!20才も超えた大人がいい加減恥ずかしいですよ?やめてください」
「可愛い弟の成長を肌で理解するのも、なかなか乙なもんだぜ?何しろ、腕と言わず足と言わず、色んな所がくっつくわけだから、発達具合がよく分かるよな。もちろんお互いの×××もな♡」
「…やめろ…っ!!」
とんでもないことを言い出す兄に、帝は思わず敬語を忘れる。

「男同士、朝になると生理現象で当然勃つこともあるから密着してるとその長さも大きさも互いによく分かって…ーっぶッつ!」

最後まで言い切る前に帝は手近にあったクッションを掴み、七王目がけて剛速球で投げつけた。

「あぶねーじゃねぇか、帝ぉ!」
ソファーにあぐらをかいていた七王にクッションは見事命中し、上質で柔らかなそれは反動で跳ねて床に落ちた。

ーこの変態め。
その減らす口を聞かずにすむよう、いっそ気絶すればよかったのに。
帝は怒りマークをいくつもあらわにして本気でそう思った。
これで同じ血が流れているとは、DNAの螺旋がきっと兄だけ異常をきたしているに違いない。

…誰かこのどうしようもない兄をどうにかしてくれ。
いっそ廃品回収に出しても良い。

苛立ちが高まるにつれ、疲れが比例して帝にだんだんと蓄積してきた。

だが帝のそんな願いもむなしくー

「…ふふっ、相変わらず仲が良いわね。ナナちゃんと帝は…」

と、姉にしてこの家の女王様こと君子が、そんな2人の様子に優雅に笑みをこぼした。

「何年経っても仲が良いことを良い事ね…私も嬉しいわ…」

君子は帝の望みを一顧だにしない保護者のような感想を述べる。

この家に君臨する絶対的支配者は、決してまともに感知をしようとはしなかった。

…駄目だ、この家は。
そもそも兄の行動を止めに入るまともな人間が1人としていないのだ。問題行動と発言をしまくる兄とセットで仲が良いと言われるとは屈辱だ…。
そんな状況でまともな環境になるわけがなかった。

「あー楽しみだよな♪今夜が。それにこうして離れてると、立派に成長していく弟の発育具合がかえってよくわかるんだよな♪」
「来るな…!!」

帝は無理とは知りながら、七王に向かって最大限の拒否をした。


Envelope Liners | Red Stamp
Envelope Liners | Red Stamp / Red Stamp


拝啓

相川久遠様
いつもお世話になってますわ。
この前、ナナちゃんがうちに里帰りした時の写真を同封しますわ。
どうぞお納めくださいませ。
兄弟2人仲睦まじく同じベッドで眠っているベストショットですの。
また久遠さんが知らない一面の七王をぜひ見てもらいたいと思いまして。

可愛いでしょう?姉としてとても心温まる光景ですわ。
帝も口では散々嫌がりながらも、結局は部屋に鍵をかけたりせず、ナナちゃんを迎え入れて最後は一緒に寝るんですの。
繊細で甘えたがりなところがある兄を、ちゃんと理解して受け入れる優しい弟ですわ。

時々こうやって写真におさめて、帝とナナちゃんの2人が共寝している所ばかりを集めて一つのアルバムに保管していってますの。幼少時からずっとしていますわ。
2人の成長具合と仲睦まじさが良く分かりますから、大切な思い出のアルバムですの。
また今度うちにいらした時に久遠さんにもお見せしますわね。

ではごきげんよう

白羽君子

敬具

Monocle Stationery Notebooks
Monocle Stationery Notebooks / brandbook.de


「……おい、七王さん。これは一体どういうことですか…?」

君子から送られたその写真を見た時、七王は「ーひっ」と思わず言葉が出た。

久遠はわなわなと肩を震わせながら、一枚の写真を手に七王に声をかけた。
頂点を通り越した、どす黒いオーラが久遠のたくましい身から発せられていた。

「…あ、相川っつ、落ち着けよ。これにはわけが…」
そう言いながら、七王は本能からドアの方向に自然と後ずさる。

「アンタ…!!この前俺がお仕置きした意味を全く分かっていないようですね…!!」

久遠はそんな七王を無駄な抵抗とばかりに、すかさず肩に抱え上げた。問答無用で向かう先は寝室だ。

「…やッつ、相川ぁ…っつ!許して……!」

この前された名残が、まだあちこちに根深く爪を残している。
そう日も経たずに、またその倍以上の行為を強いられたらどうなるかなんて考えたくもなかった。

…姉貴、恨むぜ。勘弁してくれ…!

七王は嵐に巻き込まれる寸前、そんな声にならないクレームを、かの白羽家の女帝に向けて送った――。


19273502_p110.jpg  
My creation
My creation / bluebirdsandteapots
帝と七王の掛け合いがかなり大好きです!
→ BACK(君子様のお便り①)

関連記事

拍手、頂けましたらとても励みになります♡byくーなな⇒ 
*    *    *

Information



【商業BLコミックランキング】
 
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。