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無慈悲なくーなな

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□ 最上級の祝福を □

その一日に最上級の祝福を-15-

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Carmel Valley Dreaming / The Heinrich Team


【 その一日に最上級の祝福を-15- 】


入った部屋は、決して西園寺さんの言うような狭い部屋などではなかった。
休憩室は結構な広いスペースで、2桁の人数が入っても優に大丈夫そうだ。
くつろぎやすい適度な位置にTVとソファーが配置されている。

特筆すべき箇所――面白いのはその窓の多さだろうか。
TVを中心に置いた棚の横から続き、部屋の角を通過した端側の空間が全部窓になっているのだ。つまり部屋の四面の内、一面全てが窓という設計になっていた。

大小様々なガラス窓が、これまたデザインのそれぞれ異なる窓枠におさまっている。
外を映し出す世界が広い。明るい。でも眩しい明るさではなく、優しい明るさだ。窓を通して入った光は、壁と床の白に受け止められ、部屋全体を晴れやかに輝かせていた。

窓からは爽やかな緑が溢れて、見る者を自然に和ませてくれる。
何故こんなに広く感じるのか?それは部屋の広さだけでなく、明るい開放感を演出しているこの窓の多さに他ならなかった。

部屋に入った途端、俺は少しばかり緊張がほぐれ安堵した。
いくら前に心許した昔馴染とはいえ、かなり年数が経過してからの、1対1の対面と言うのはやはり多少は気を使うものだ。
改めて2人きりになると、時が離れたぶんだけ、話していると互いの変化に敏感になりそうな気がする。


――昔の自分と今の自分。
また西園寺さんもしかりで、その差が違和感なく、ただ懐かしい嬉しさと好意だけで全部埋まるはずなどないのだから…。
人は変わる。場合によっては良いようにも悪いようにも。
彼の記憶の中の純粋な子供の俺と、今の大人になり多少汚れてしまった俺と、その相違に西園寺さんががっかりしないといいな…と実は少し、成り行きを心配していた。
いや、もちろんゆっくり2人で話したかったのは他でもない俺なのだが、それはそれ、これはこれ。
ともすれば肝心な時に限ってなりがちな「臆病」につける薬はないのだ(言い換えると、繊細とも言う)。
相川に言わせると、それはとどのつまり『余計な心配』なのだろうが…。

相川との一件で、自分は存外そんな小心な所があるのだなと最近よく自覚するようになった。(帝などに言ったら心外な程大きく鼻で笑われそうだが)
その傾向は、好意を抱いている人の前では特に顕著になりがちだと。

相手に嫌われたくない。がっかりされたくない。そう思ったらどうしても時々相手の反応を伺ってしまうし、どこか身体に力が入るような気がする。
そんな俺を見透かしてなのかどうなのか。
(おそらく分かっているのだろう)
西園寺さんがここに案内してくれた。


西園寺さんって、相変わらず気遣いが上手だな…。

偶然近いこの部屋に案内しただけで単に深読みしすぎかもしれないが、西園寺さんはそういう気遣いができる人だ。この部屋の醸し出す雰囲気で、俺にはそれが何となく分かる気がした。


西園寺さんと部屋の中まで入ると、ソファーへと促される。

「どうぞ座ってください、七王様。今お茶をお入れしますので」
「良いですよ、そんな。俺に気を使わなくても」
「話をするのに喉が乾かないよう軽く入れるだけですので、お気になさらず。15時にお伺いする時に、差支えないよう口を湿らせる程度で」
「そうですか。じゃあ、少しだけ…」

断る理由もないので受けると、西園寺さんは
「七王様は、昔からお茶が好きでしたよね?」
と何処か懐かしげに目を細め、表情を和ませた。

「…まぁ、そうでしたね」
気持ちを読み透かされて先手を打たれるし、今となっても昔のまま完全に子供扱いされてるなぁ…と心なしか気恥ずかしくなり、口に手を当てコホンと本気ではない空せきを1つこぼす。
「西園寺さん、ほんとによく覚えてますよね。ケーキの事と言い、俺の好みを」
「それはもう。貴方様の事ですから、色々と」
「えぇ?色々って何だか怖いなぁー。まぁ昔のことだし、俺はもうすっかり今は良い大人なんで何を握られてても負けませんよ?」

含み笑いをした西園寺さんの言葉に、俺はわざと肩を竦め、楽しさを持って応戦した。
西園寺さんは、-ふふ、と一声笑って
「それじゃ、色々と話が弾みそうですね。楽しみです」
とコメントを残し、おそらく奥に給湯室があるだろう部屋の隅の間仕切りに、―衝立の向こうへと消えていった。

Carmel Valley Dreaming
Carmel Valley Dreaming / The Heinrich Team

続きの小部屋に行った西園寺さんの背を一見して、俺は窓の方へ向かう。
美しく可憐な花を咲かせた木や、生い茂った木々を一瞥し、別荘の方向をそこから垣間見た。

相川は今どうしてるかな…?

もちろん一生懸命料理の下ごしらえをしてる最中なのは分かっているが、少し離れただけなのにもうさみしさを感じる。さっきまで一緒にいたのに。
汚れ一つなく磨き上げられた窓は外を映すだけでなく、反射して同時に自分の姿をよく映してくれた。

しばらくそうしてぼうっとしていると、次第に優しい花の香りが鼻孔をくすぐってきた。初めて嗅ぐ香りだ。

「――よく見えるでしょう?外が」
「西園寺さん」

窓の向こうを見つめていたが、ある意味合わせ鏡になっているガラス窓に自分以外の姿が小さく映った。
昔執事をしていただけあって、お茶を運んでくる姿が如何にも様になっている。姿勢を崩さず、流れるような動作でトレーを持つ西園寺さんは、透明のポットの中身をたいして揺らすことなく、こちらに近付いてきた。

「……?」

目を惹くものが、西園寺さんの手の中にある。それを認めて、俺は振り返った。

「先程昼間に珈琲を注文されていたようですので、こちらにいたしました。胃に負担をかけませんので」
「…それ、何ですか?」

西園寺さんが手に持ったそれに目が釘付けになる。
耐熱性ガラスのティーポットの中は、紫がかった深い藍色の花びらがいくつも浮かんでいる。そしてほのかに湯気を発するその液体は、青く鮮やかな水色で占められていた。
雲一つない、澄み切った空のような美しい水色だった。

「マロウブルーティーですよ。別名、゛夜明けのハーブ˝とも言われる、ハーブティーの一種です、珍しいでしょう?こうして目を楽しませてくれるだけでなく、味の方も飲みやすくて美味しいですよ」
「そうなんですか?初めて目にしました」
「ええ、胃や喉にも優しいハーブティーですので、七王様に気に入って頂けるかと」
「西園寺さんのお墨付きなら間違いなさそうですね。それは飲むのが楽しみです」
「今お入れしますので、こちらへどうぞ」

相川のことを想っていた思考が、一気に西園寺さんのもてなしに興味を惹かれる。

テーブルで上品なティーカップに、西園寺さんがゆっくりと紅茶を注ぐ。
その昔から変わらない、手慣れた光景に何処かで安心する自分がいる。
傾いたティーポットが花を含んで優雅に揺らめくと、やがて白いカップが綺麗な水色に染まっていった。
白に映える、爽やかで癒される色だった。

ティーカップの中に、空が広がっている。
晴天の空、淡い青色、スカイブルー。
いや、それとも一点の濁りもない透き通った南の島の海だろうか。コバルトブルーが美しい。
口にすると如何にも清々しそうな感じがする。

「どうぞ、七王様。紅茶の素材が充分味わえるよう、ほんの少しに留めて、蜂蜜を入れてありますので」
「ありがとうございます、いただきます」

西園寺さんの用意が全てが終わると、ソファー近くに移動させたガラステーブルに俺は早速手を伸ばした。
カップ越しに温度を確認して、一口飲む。

「……ん、」

くせのない、ほのかな甘みのある味に口中が包まれる。微かなとろみのある液体が、舌から喉元をしっとりと通る。嚥下すると、品のある香りが一層近くに感じられた。
爽快感が突き抜けそうな見た目とは裏腹に、まろやかで飲みやすく、口に含んだ時の舌触りも良い。俺が好きな味だ。

「美味しいです、とても…」
綺麗な色合いの青い紅茶というだけでも珍しいのに、味も美味しいとは。
カップを傾ける手は喜んでいた。
「それは良かったです、お気に召して頂けたようで。色々、他の紅茶とブレントしても美味しく飲めますので、良ければまた気が向いた時にでも味わってみて下さい。きっと楽しいと思いますよ?」
「そうですね。そうしたいです、是非」
お茶の類は全般的に好きだから、こんな紅茶があるならば、ティータイムの常連の1つに付け加えたいなと思う。色味的に気分転換時にぴったりだと思うし、眺めるだけでも何かスッキリと気持ちが落ち着きそうだ。青紫の花に湯を注ぐ瞬間も、きっと楽しいものだろう。

「――それともう1つ、よろしいでしょうか?」
「はい?」
「こちらを見ていて下さい、七王様」

注目、と人差し指をかざして、西園寺さんは遊び心を含んだ目でこちらを見る。
そう言って西園寺さんは、もう1つ同じように注いであるティーカップに、おもむろに持ってきたレモンを絞った。数滴たらし、素早くマドラーで円を描く。

――すると、水色の螺旋が一変した。

「ぁ…-!?」

カップの中の空は、またたくまに淡い桜色へと変化を遂げる。
――水色からピンクへ。
涼やかなアクアマリンの残像は、気付けばない。
まるで先程まであった色は目の錯覚だったのではないかと思う程、一瞬での鮮やかな変貌だった。

「これ…!?」
「綺麗でしょう?こうしてレモンを入れると、化学反応が起こって色彩が変化するんです。この紅茶は。さながら昔七王様と一緒に実験した、朝顔を使った色水遊びみたいですよね?これ」
「これ、あの時の延長ですか」
過去と現在が結びつく。
間をおかずに七王は西園寺の語尾を引き継いた。
朝顔と紅茶。楽しい昔の記憶がたちまち蘇って、七王は西園寺の前で笑顔以外でいることができなかった。

「西園寺さんって昔から人を楽しませたり、和ませたりするの、ほんと上手ですね…。叶いません、そういう所」

気分がほぐれて、心和む。
微笑み合うと、時間も何もかも関係ない気がした。

「それほどでもない…と、謙遜するべき所なんでしょうが、ここはあえて素直に受け取っておきますね。お褒めに預かりまして光栄です、と。嬉しい初耳の言葉をありがとうございます」
「西園寺さん」
その茶目っ気がおかしくて、今度は七王がふふ、と声に出して笑う。
手元に持った、カップの中が七王に合わせて小さなさざ波を立てた。

「さ、せっかく入れた紅茶が冷めてしまいますよ。冷めない内にどうぞ。お手元の分と、今レモンを入れた分と、良ければ味の違いを楽しんで下さい。味わいがまた違いますので」
「あ、はい。じゃあ西園寺さんも一緒に」
「ええ、是非そうさせてもらいます」

西園寺は自分の分も合わせて、カップに注ぎ始めた。

ソファーにゆったりと腰かけて、また一口含むと、胸がほんのりと温まる。
一息つくと、空気も気持ちも休まって穏やかになるから、お茶を飲むのが好きだ。

…飲ませてやりたいな、相川にも。
きっと、「美味しいですね」とシンプルな感想を述べ、ゆっくりと味わうに違いない。
変化する美しい色にも同じように「綺麗ですね」と、一言だけ告げて…。

ここに居て欲しい。隣に。すぐ傍に。息もかかるような至近距離で。
他のことに気が捕らわれてもそれは一瞬のことで、やはり意識はすぐに相川へと帰っていく。

身体は離れても、心はいつも相川と一緒にいたいと熱望する。

何を見ても、何をしていても、何を感じても、相川以上に胸を占めるものはないのだといつも思う。


「一息ついた所で、不躾ですが七王様のことが色々知りたいですね。離れた時の分だけ。できれば一緒にいらしてる大学の後輩のことも詳しく…」

ポイントを押さえた、切れのいい言葉。
再び久遠に想いを馳せている七王に、西園寺の本題が鋭く響いた。


《続く→》
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