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無慈悲なくーなな

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□ 最上級の祝福を □

その一日に最上級の祝福を-14-

※いつもながら、画像はあくまでもイメージです。

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nuortennurkka - ungdomshörnan / Kauniaisten kirjasto - Grankulla bibliotek


【 その一日に最上級の祝福を-14- 】


誕生日に、久遠に言わせれば若干心配な「独り歩き」をする七王は、見知った土地だからこその軽快な足取りで目的地に向かっていた。

「今日はほんと、運動してばっかだな~。ま、いつも車であまり動かない日が多いからたまには良いよな。動いたら動く分だけ腹も減って、相川との夕食も進むだろうし。…何しろ運動と言えば、最近相川とのセックスだけになってる気がするしなー(笑)」

七王は声に出さず、そんな事を思った。
唇に、まだ先程の感触が残っている。そっと指先で唇を撫でると、その近すぎる記憶から七王は幸せを噛みしめた。

相川に関する事は何でもとにかく幸せを感じるから、自分は本当に相川にイカれてるなと思う。家族といる時の、血の繋がり故の絶対的安心が前提の「幸せ」とはまた違う、「幸せ」
焦りと不安と切なさと、嬉しさと楽しさと夢のような幸せが起こすこの恋の胸の高鳴りは、いまだかつて経験したことがない。

時々どうしていいか分からなくて、相川にどう振る舞えばいいのか分からなくなる時があって、自分で自分の感情に振り回される日々だ。好きになればなるほど、感情の振子は良い方にも悪い方にも大きく揺れる。
絶対に相川が俺から離れていくことはないという確証がない限り、いつも何処かしらに不安はある。そんなものはまずないと分かっているから、どんどん大きくなる感情に怖いと思いながらも、日々際限なく溺れては自分の気持ちの大きさを自覚する。そして自覚すればするほど余裕がなくなるから始末が悪い。
恋愛とはそういうものだ。恋とは必ずそんな一面を含んで、恋する者を翻弄するものなのだ。それは皆同じなのだと今は分かっているし、相川だって少なからずとも自分と同じように思ってくれているのも分かっている。

自分だけが好きなんじゃない。
その事実だけで俺は充分幸せで満たされる。
現状に満足したからと言って、湧き出る望みが消えるわけではないが、今はそれでいいのだ。
決して打ち消すことはできない高望みは胸に押しとどめて、そっと口を噤むことを今はまだ選択したい。
きっと相川の傍にいる限り願望は消えることはないだろう。先で俺が切望しすぎて、うっかり酒の場とかで口を滑らせないよう願うばかりだ。

願いや欲求は一度胸に灯ると、それが解消されるまでずっと胸にくすぶり続けるものだからどうにもできない。一筋縄でいかないものとの付き合いは自分なりに上手くこなしていくしかないのだ。

今一番に願う「ずっと傍にいたい」望みを、わざわざ口に出す必要はないと思う。それは順番が違うって。
気持ちを告げるのが怖いのとは別に、俺だけが思っていても仕方がない。相川も同じ気持ちでいてくれないと、告げてもただの我儘が引き起こす無理強いになってしまうかもしれない。
それよりもその願いが叶うよう、俺が相川にとって、なくてはならない存在になるよう頑張ることが先だ。
少しでも相川にとってそんな存在になれるように…。自信がないけれど、そう思う。
七王はつらつらと歩きながら、そう思いを巡らした。

互いに同じ気持ちでいても、相手に言わないと伝わるものも伝わらない。気持ちを分かり合うことはとても大切で、思い違いをすると時に擦れ違いが生じて、とんでもない誤解を生むこともある。
一緒にいたい気持ちは同じで、七王は久遠にとってもう既になくてはならない存在であるのに、肝心の七王はそれに全く気付いていないのだった。



***


「…よし、何読もうかな」

一見、他の別荘と変わらない外観の館に辿り着くと、七王は図書館にしては少々豪華な内装のドアを開く。
受付でこの別荘地を利用する者にしか配られない利用証を提示し、久方ぶりの施設に足を踏み入れた。

図書館とまでは及ばない設備とは言ったが、しばらく来ない内に取扱い分野が増え、随分本棚の面積が充実したようだった。
限られた時間内に読むには、何が良いのか1階、2階とさっと目を走らせる。本を読むことに手慣れた七王が各分野の本棚を物色するには、そう時間はかからない。貸し出しもしているが、もちろん借りて帰る気はなかった。
そうした所で、同じ部屋にいれば確実に本より相川が気になるしそっちを見たいから、とてもじゃないが集中して読むことができない。それに今日と言う日は相川といる時間を大切にしたい。
なのでここで時間内で読んで帰れるくらいの本は、自ずと本の幅が薄い短編集に限定されるのだった。大学で勉強している分野の本も良いが、遊びにきているこんな時は、気分的にエッセイやミステリー、それに雑誌あたりで良いか、と七王は思う。

本の背表紙は、昔から七王を惹きつけてずっと日常にあるものだった。読む速度もそれなりに早い。
適当な本と数冊の雑誌を手に取り、座り心地の良いソファへと移動する。
読む前に一応時計を確認して、本を開いた。初めて手に取る本でも、紙の感触は相変わらず手に馴染んで、身近に感じられた。

ほどなく頁をめくる音が、部屋に溶け込む。
自然に囲まれた空間は、窓から読書をするに適した緑の陽光と、葉音の旋律を心地よく伝えてくれる。


――すると、予期せぬトーンがそこに響いた。

「相変わらず本が好きなんですね…七王様」
「――!?え…っ!」

落ち着いた淡い影が、後方からかかる。
そこにいるはずのない人の声に、七王は驚いて本から顔を上げた。

足音を吸い込む質の良いラグは、思わぬ来訪者の予兆を告げてはくれなかった。

「西園寺さん…!」
その顔、その声、知っている何もかもが洗練された人。
七王は一気に本の世界から彼へと意識が飛び立った。
「申し訳ありません、読書を楽しんでいた所をお邪魔しまして。再会から私はお邪魔ばかりしてますね」
ふふっと軽い微笑が空気に振動する。
ここへ来て三度目、今日で二度目の再会になる相手は、悠然と七王へ微笑んだまま対顔する。
「ですが、本日何度もお目に掛かれて本当に光栄です。本が好きな所は昔と変わっていらっしゃらないようで、私の記憶の中にいる七王様と違いがないと分かって嬉しいです」
「西園寺さん、驚きました…!ほんとに神出鬼没ですね」
「はい、先程遠目に1人でいる七王様を偶然お見かけしたのでつい、こうしてやってきてしまいました」
さっき昼に会ったばかりなのにまたここで会うとはと思うと、偶然とは言えとても不思議だった。
「―あ、私は決して七王様のストーカーをしているわけではないですよ?逐一貴方様の予定を把握しているわけではありませんので、そこはあしからず」
西園寺は愛嬌のある微笑を口元に乗せて言う。
「思ってませんよ。そんなこと」
見知った彼流の茶々に七王の口角が上がった。

「分かりませんよ?心配性の貴方には一応こうして言っておかないと」
「やだなぁ。あ、西園寺さん、どうぞかけて下さい、隣にでも」
立ったままの西園寺に、七王がソファにと声を掛ける
「良いんですか?本を読んでいる最中でしたでしょう?」
「かまいませんよ。特に読みたいわけではなかったし、これはたまたま必要に駆られて」
「…そうなんですか?」
「ええ。西園寺さんさえ良ければ、俺は本を読むよりは西園寺さんと話がしたいです。あ、でも仕事中ですよね?ならやっぱ時間はないか…」
邪魔してはいけないなと、少し残念そうに七王は言う。
「…大丈夫ですよ。仕事は本日は午前中だけで、午後からお休みを取っておりますので」
「え、そうなんですか!?」
たちまち七王の顔がそれではと期待に華やぐ。
西園寺はそんな七王を見て、目を細め微笑した。
「ええ、そうです。時間はたっぷりありますから、また良ければ私と昔話に花を咲かせますか?」
「はい、良いんですか?それは願ってもない話です。嬉しいなぁ、西園寺さんとまたじっくり話ができるなんて」

昨日も話はしたものの、相川が傍にいたのと西園寺さんが仕事中だったので、一応これでも俺なりに遠慮していたのだ。もっと話がしたかったが、あまり時間が長引いてはと適当な所で切り上げていた。
西園寺さんに聞いてみたいことも、したい内輪の話ももっとある。
今日は今日で、あくまでも時間内に相川のいる傍で、適切に聞ける範囲内で色々会話しようと思っていたが、それが2人きりならもっと遠慮なく聞けるはずだ。

「ええ、もちろん良いですよ。こちらとしましても絶好の機会で嬉しいです」

その一言に、俺は一もにもなく喜ぶ。
「じゃあ、約束の時間までゆっくり話しましょう」
「はい、喜んで。それでは七王様、ここで話すのは何ですから場所を変えませんか?この施設内に、そんなに広くはないですがちょっとした落ち着ける部屋がありますから。ここは本を楽しむ場所ですから、静かに利用するのが原則ですし」
「ああ、そうですね」
同じ階にたまたま人はいなかったが、静寂が決まりの場所で個人的な会話を繰り広げるのは、NGでしかない。
うなずくと、西園寺さんはあっちだと人差し指で方向を指し「行きましょう」と誘導してきた。
「はい」

2人並んで立って歩くと、西園寺さんとの身長差を改めて感じる。
俺より高い、身のこなしに隙が無い、大人の、男だ。

「従業員の休憩室で少し狭いですが、個室ですし眺めもそう悪くないですよ。しばらくは誰も来ませんから、くつろげるかと思います」
「西園寺さんのお墨付きなら、大丈夫ですよ。俺は何処でもかまいません」
「そうおっしゃって頂けると大変助かります、ありがとうございます。では、こちらへどうぞ七王様」

2階の廊下の突当りにその部屋はあった。
鍵を差し込んでドアを開き、西園寺さんは俺をうやうやしく手招く。

stripped & polished door plate
stripped & polished door plate / jambina

それに軽く微笑んで目を合わせると、彼の瞳の底は咲き匂った桜の枝が水面に浮かんでいるかのように、たおやかで品のある微笑が漂っていた。
だが深みのある水は依然として全貌を見せようとしてはくれない。

――そこには一体何があるんだろう?
願わくばその表の水面だけでなく、彼の深い水底も覗き込んでみたい。七王はそう思った。



《続く→》
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