FC2ブログ
 
 

無慈悲なくーなな

□ スポンサー広告 □

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

拍手、頂けましたらとても励みになります♡byくーなな⇒ 
*    *    *

Information

□ 最上級の祝福を □

その一日に最上級の祝福を-8-

久々の更新にも関わらず、今回あまり進展がありません(;^ω^) すいません。。

2323888133_977f469491.jpg
Hiking Towsley Canyon / JefferyTurner

 2人で少し遅めの朝食(相川が作ってくれた♡)をとった後、せっかく山中に来たのだしと、周辺を散策することになった。
 豊かな自然に加え、生活に便利なショップやレジャー施設もあり、充実する時を過ごすには事欠かない場所だ。それだからここを選んだと言うのもある。

 「相川、何処に行く?」
 周辺のMAPを持ち聞いてみる。
 「俺は何処でもかまいませんよ。七王さんの誕生日なんですから、七王さんが決めてください」
 相川らしい最もな答えが返ってきた。

 …そういや、そーだった。俺誕生日だったな。
 今朝も相川の腕の中で何度も言われたって言うのに、もういつの間にかすっぽ抜けてた。
 言われて、至極浮かれ気味な自分を改めて自覚する。
 相川と一緒にいられるだけで嬉しくて、自分のことなんてやっぱ二の次になっちまう。
 そんなことを言ったら、きっとまた相川に怒られちまうんだろうな…。

 「あー…そうだな。それじゃ、このハイキングコース歩いてみるか?湖ぞいにぐるっとさ」

 MAPの湖を囲むように伸びるコースを指す。
 森の中を歩いて辿り着いた先は、美しい湖に遭遇するルートだ。そんなに本格的に距離も長くなくてきつくないし、ちょうど良いと思った。

 「じゃあ、そうしましょう」
 行き先は難なくあっさりと決まった。


 屋敷に置いてあるウォーキングシューズに履き替え、俺は相川とハイキングに出かけた。

 「…やっぱ空気が違うな…」
 「そうですね」

 歩きながら、前後左右を見回してみる。
 中途半端な時間だからなのか、他にもハイキングコースがありそちらに集中しているからなのか、周辺には誰もいなかった。

Hiking 3
Hiking 3 / henryacurtis

 徒歩5分もしない内に森の中へと入り込んだ俺達を、透き通った樹木の香りが包み込む。心地良く鼻梁を包む樹木の清香に、安らいだ開放感を思い起こす。
 新鮮な森の空気を浴びると、科学的にも実証されていることだが、やはり何かしら癒されている気がした。

 …うん、やっぱ森林浴は良いな。

 山の静寂は鳥のさえずりと風が奏でる木々の音で優しく満ち足りていて、木漏れ日は柔らかく足元を照らし、まろやかな輝きを大地に降らせている。

 穏やかで癒される場所が、そこに広がっていた。

 「…な、相川」

 歩を並べてそうしない内に、俺は隣の相川に声をかける。
 何だろうと相川が俺に視線を寄せる。俺はふっと口元を緩ませて、あることを実行に移した。
 何気なく相川に近寄り、腕にぎゅうっと抱き付いてみる。服越しでもはきと分かる筋肉質を感じて、相川特有の固さに男らしさを感じ取る。
 それから巻き付いた腕の先を、相川の指にそっと滑るように絡ませた。繋いだ先から、熱と自分の中でこもった何かが、少しずつほどけて融解する気がした。

 ただ手を握って、こうして2人並んで歩いてみたかった。

 「このままで、しばらく歩いて行ってもいいか…?」

 普通のカップルみたいな真似事が少し照れくさくて、はにかみながら隣を伺う。我ながら乙女じみてるかなぁ…と胸の中で少し思いながら。
 最近、帝にも良く呆れ果てたように「何で兄さんはそんなに乙女なんですか…」と言われることを思い出し、「そうかもしんねぇ」と引き上げた口の端で、その回想を転がした。

 「はい、もちろん」

 二つ返事で、相川が俺の掌をぎゅうっと握り返してくれる。

 相川の温度を感じた瞬間、ほんの少しの危惧はたちまちほのかな安堵へとすり替わった。
 事相川に関しては、いつも俺は自信があるとは言い難い。

 『こんな事を言っても大丈夫かな…?』
 『変に思われたりしないかな?』
 『…嫌われたりしねぇかな?』

 何かの折にそんな不安が頭をもたげては、その度臆病な心をざわつかせる。相川のことが好きだからこそ、なる心理だ。他の男にはこうはならない。

 好きで好きで…惹かれてやまない相手だからこそ…。



 何処からともなく風が吹く
 遊歩道の、土の感触。
 それはもの柔らかに歩を受け止めては、俺達の進みを軽やかなものにしてくれる。

 肩を並べて、歩幅を合わせて、手を握って。同じ風景を見て。
 今この瞬間、同じ場所で同じ時間を共有している。
 それだけで言葉では言いあらわせないくらい幸せで、嬉しくて、ずっとこんな時間が続けばいいと思う。
 さっき相川と繋がってる時も、終始そう思っていた。言葉を交わしてる時も思うし、目を合わせている時も思う。電話してる時もメールしてる時も、一緒に飯を食ってる時もそうだ。
 俺はいつも思っている。

 相川とずっとずっと一緒にいたいって。

 ずっとずっとこれからも、何度でもそんな時間が続けばいいと。

 相川が言っていたこと。
『俺が本当に欲しいもの』
 俺の誕生日の贈り物に、俺が心から願う本当のことを言えと。俺が欲している本心を…。

 ――欲しいものなんて、ただ1つ。それしかない。

『これからも俺の傍にいて欲しい。…ずっと。相川が欲しい』

 それだけだ。

 …でも、そんな事言えない。とても口に出す勇気がない。俺には過ぎた望みだと正直思う。おこがましくて、分布不相応だって。
 こうして傍にいる時でさえ、何処か心の片隅で゛俺は相川にふさわしくないんじゃないんだろうか?˝――そう思う一瞬があると言うのに。

 元々恋愛対象の相手は、女性――ノーマルの相川が、俺みたいな『男』と無茶苦茶な成り行きで関係を持って、そんな強引な始まりだったにも関わらず、何かの事故みたいに奇跡的に俺のことを好きになってくれて。同じ気持ちを返してくれて。
 けれどそれだってずっと同じ気持ちでいてくれる絶対的な保証はない。いつまで続くか分からない。ふとした何かのきっかけで、いつか相川の目が覚める時が来るかもしれない。

 …俺とのことは、一時の気の迷い――…間違いだったと……。

 別に相川の気持ちを疑っているわけじゃない。俺のことを真っ直ぐに見て、「好きだ」と、「愛してる」と言ってくれた。その気持ちを信じてる。

 けれども、湧き出る不安は拭いきれずひそやかに降り積もる。嘘のない、誠実な相川の心を信じようとする想いが、不安と、相川のことを好きになればなる程湧き上がってくる畏れに、どうしても時折呑み込まれそうになる時があるのだ。

 ――それは比較的真夜中によく起こる。
 たった1人で自室にいる時。夜の帳が完全に覆われた時に頭をもたげてくる。何処からともなく。
 暗い影を引きずった夜闇が足元から憂いと共に這い上がってきて、そうしてゆっくりと黒く塗りつぶされていく…時間をかけて。

 目を閉じれば、昔俺を毛嫌いしていた相川の姿が瞼の裏に浮かぶ。闇の中で鮮明に。

 『嫌いなんです、誰でも良いって感じの人』
 『…俺はアンタみたいな人は好きじゃない…』

 昔俺に向けられた、相川の気持ち。相川の本心。

 「…ッ、」

 思い出す度に胸が締め付けられて、ひどくざわつく。必要以上に静まり返った闇の中で、それは重くのしかかる。

 それらを告げられた時からそう経たない内に、相川の俺への「嫌い」の感情は鳴りを潜め、「独占欲」と「好意」になり変わった。信じられないことに、相川と付き合うようになった。

 相川の、俺へのその気持ちをちゃんと分かってる。でも……。



 夜は嫌いだ。
 昔から1人でいると、ロクなことを考えない。考えてもきりがないことを、とめどなく思ってしまう。馬鹿だなと、自分でも思う。だけど止められないのだ。
 桐屋先輩の1件の後、それに余計拍車がかかったように思う。

 昔はそんな時は不安に取りつかれそうになる前に、夜の闇に積極的に自分から繰り出していた。ネオンサインを追って、その下で誰ともしれない適当な相手に身を任せることで、その都度不安を紛らわせていた。誰でも良かった。後腐れなければ。
 誰かと一緒にいて、快楽の底に沈んでいれば、その間だけは何も気にならなかった。不安も、自分の脆い内側も見なくて良い。それで良いんだと思えた。快楽は何もかも、自分にとって思わしくないことから逃れる、唯一の回避手段だった。
 何でもなく脚を開ける。何でもない顔で笑える。自分の身体が、自分でどうにでもなるように、自分の心だって自分でどうにでもできる。簡単だ。そう思えた。
 俺は大人で、割り切った遊びができて、自分のことは自分でできる。大抵の事は何があっても一歩下がって達観できる。だから大丈夫だ。これからもずっと1人で生きていける。自由気ままに生きていける。そんな風に思っていた。

 …そう、思っていたはずなのに、今は違う。

 ――それは相川と会ったから。

 あれから、世界は一変した。

 本当の幸せを知った。
 人を好きになることを。

 そして今が幸せであればある程、いつか訪れるかもしれないことへの不安の影に脅えるようになった。

 相川に拒絶される時――相川との別れの時を

 あの頃の゛不安˝とは全く違う。
 今の方がずっと怖い。相川を失ったら、俺はもう二度と立ち直れないかもしれない。そんな気持ちが胸の中で降り積もっては、またその重みに心が軋みを立てる。負担に思われたくなくて、相川には言えないから、溜息をこぼしてはこの胸の痛みさえ、相川への大事な気持ちの一部だと大切に厳かに抱え込む。
 無理やり振り払おうとしても決してなくなることはない。
 いつのまにか胸に巣食うのだ、――何処からともなくあらわれる蜘蛛の巣のように。

 そういう時は無性に相川に会いたくて。声が聞きたくて。姿が見たくて。体温を感じたくて…。
 でも俺の突発的な感情で夜中に相川を呼び出したりして、無茶な迷惑をかけることはできない。できるだけ無理な要求を押し付けることはしたくない。振り回すようなことは。
 甘えることは何とかできるようになったけれど、そういう無茶ぶりはまた甘えるとは違う気がする。範疇外だと思う。
 
 ゛仕方がない˝  そう割り切るしかない。

 きっと相川を好きな限り、ずっとついてくる感情だ。胸にしまったまま、大丈夫だと自分に言い聞かせやり過ごしていくしか。
 不安は誰の胸にだってある。大なり小なりどんなことにも付きまとってくる。俺だけじゃない。これは幸せな悩みには違いない。自分の好きな相手と付き合えているからこそ、発生することだ。一時的だが、不安に押し潰されそうな夜は酒を飲んだり(帝を必要以上にからかったりとか)他にも色々やり過ごす方法だって俺にはある。…だから、大丈夫だ。

 相川が、俺の傍にいてくれる限りは。

 不意に顔を出した憂慮を自身でそうなだめていると、まるで風が大丈夫だと言うふうに、優しく俺の髪を滑り頬を撫でていく。

 「…………」

 その風の流れで、ふっと思い出した。昔のことを。

 …そういえば子供の頃、俺が訳もなく不安がっていた時、西園寺さんはいつの間にか空気みたいに俺の傍にいて、今の風のように俺を撫でてくれていたな、と。ただ黙って、不安な夜は俺の気持ちに寄り添ってくれていた。それこそいつまでも。
 彼は軽く羽根のように何度か俺にそっと触れるだけなのに、それなのに俺にはそれが愛情のこもったものだと子供ながらにはっきり分かっていた。それだから俺は凄く安心できて、「この人と一緒にいたら俺は大丈夫なんだ」そう思えて嬉しかった。
 西園寺さんといると、他人に自分を委ねることが、とても心地いいもんなんだって分かることができた。

 懐かしいな…あの時が。

 きっとつい昨日彼に会ったばかりだから、特にあざやかに思い出すのだろう。
 俺は視線を遠くの景色を見るようでいて焦点を合わせず、セピア色に彩られた過去のアルバムをゆるりと紐解いていた。


 「七王さん…?」

 山が育む自然を眺めながら七王さんと歩いていると、繋いでいる七王さんの手が一瞬不自然に強張った。そうかと思うと、その後緩み、そして最後に強く俺の手を握り締めてきた。不思議に思い顔を伺い見ると、何やら様子がおかしい。
 周りを見ているようで見ていないような、ぼうっとしている現実離れした眼差し。この世で最も美しいと思っている黒の結晶は、たわやかに揺らめいていた。
 ――存在感が空気に溶け込みそうな程、瞬間儚く見えた。

 こんなに傍で近くにいるのに、瞬間、瞬間、七王さんはとても短い間に様相が変わる時がある。
 内に秘めて、外に出さない。
 何かを胸の奥に抱え込んで、俺にはそれを見せてくれない、言葉にして伝えてはくれない。
 それでも、彼が見せる僅かな目や口の動き、所作、沈黙、隠してはいるが無意識に発せられる雰囲気の微量な違いに、気配を研ぎ澄ませばそこに僅かながら見えてくるものがある。
 いつだって俺は七王さんのことが知りたくて仕方がないから、いつも彼の気配には敏感でいたい。何もかもぶつけて欲しい、俺には遠慮なんて必要ないのだと分かって欲しい。
 もうすっかり慣れたもどかしさを胸に同居させたまま、更に様子を伺った。

 「どうかしましたか?七王さん」

 ほんの少し目を離した隙に、どうにかなってしまうような危うさを孕んでいる彼を、片時も離さず傍にいて守りたい。絡めた指先に込めた思いを、強く意識した。

 「……―え?何?」
 七王さんが呼ばれたことに気付き、鈍い反応ながらゆっくりこちらを振り向く。
 「アンタの様子がいつもと違って心ここにあらずといった感じで、何か考え事をしてるように見えましたので」
 「…あぁ」
 七王さんは広母音を二度ほど出すと、何処かに彷徨っていた瞳を俺の元へと舞い戻らせた。

 「何でもねぇよ。…ちょっと昔の事、思い出してただけ」
 ぽつりと七王さんは呟いた。
 「…昔の事、ですか?」
 瞬く間に、昨日会ったばかりの西園寺さんの面影が俺の中でちらつく。
 「うん」
 七王さんは唇に微笑を纏わせ、柔らかくうなずいた。
 「…それはどんな?」
 「大したことない、何でもねぇ幼少の思い出だよ」
 そう言って幸せそうに七王さんは口元を満たした。眼鏡越しの瞳には、木漏れ日が穏やかに宿っていた。
 「…………」
 俺は七王さんの中に入り込めない思い出があるようで、ちり、と胸が疼いた。

 「あ、見えて来たな、湖。もうすぐそこだ」


 出発してからかれこれ30分は経過しただろうか。
 彼の声に前方に目をやれば、目的地の湖が木々の間から見え始めていた。

hiking Stone Mountain, Georgia
hiking Stone Mountain, Georgia / Rick McCharles


《続く→》
→NEXT
→BACK


 

関連記事

拍手、頂けましたらとても励みになります♡byくーなな⇒ 
*    *    *

Information



【商業BLコミックランキング】
 
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。