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無慈悲なくーなな

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□ 最上級の祝福を □

その一日に最上級の祝福を-9-

短いです。またまた進展あまりなしです。
変なとこでぶつ切りしてます、すいません。。。

Free Bird 2
Free Bird 2 / stelthman88

 回想にふけりながら道なりに歩いていると、相川の声がかかった。
 心に蘇った過ぎし日の遠い記憶を大切に紐解きながらも、相川といくつか言葉を交わしていると、次第に過去から現在へとピントが舞い戻り、焦点が定まってくる。
 そうすると視界が徐々にクリアに広がっていった。
 肌に触れて流れる風に涼しさが増したなと感じる。
 ――と、前方の木々の合間から水のきらめきが垣間見えた。

「…つきましたね」
「ああ…」

 コンパスの長い相川の脚が止まる。

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Imperturbable / Nicholas_T
 
 美しい湖がそこに広がっていた。 
 ――太陽と木々の緑。
 器いっぱいに抱きとめた空の青と山の輝きがきらめき、水面に満ちてゆらゆらとたゆとう。
 そこには明るい爽やかなあたたかさが確かにあるのに、同時に水底には奥深さと静謐さをしっかりと宿していた。

 軽やかな風は湖を走り、湖面にささやかな波状の曲線を次々と生み出す。
 鳥が澄んだ水面の上間近すれすれを風と共に飛んでいくと、羽根の切っ先が湖に触れて、小さな波浪がそこに描かれていった。

 昔見た湖と、記憶が一致する。
 何年も経っているのに湖は変わらず美しく輝いていて、時の流れとは無縁のようだった。

「綺麗だな…」

 水面に反射する光がまぶしい。
 けれど、決して目をそむけたくなるような嫌なまぶしさではない。ずっと飽きることなく、眺めていたい。
 そんな安らぐ情景だった。

 透き通った水面は覗き込んだ自分達を映している。
 吹いていた風が凪ぐと、木々から葉が落ちて、そこに一つの波紋を広げていった。
 輪のように幾重にも広がる波の形は、葉を中心にして独りでに連鎖していく。
 
 水辺に佇む自分の姿が、心許なく揺れた。

「……………」

 まだ幼かった頃に、来たことがある場所。
 水面に、記憶から届いた過去の自分と、現在の自分が重なる。

 あの頃に比べて、自分はずいぶん変わったものだと思った。
 純粋だったあの時とは違う。自分がどんな人間かもさほど知らず、無邪気にただ笑っていた、あの時とは。
 手も足も背も伸びて――…色んなことがあって大人になった。
 別に子供の時だって、変わらず自信が溢れていたわけけではなかったけれど、昔は今と違ってもっと自分に自信があったように思う。
 今よりはシンプルに素直で、思ったことも誤魔化さずに言えていた。
 決して自分を偽ったりせず。

 それがどうだろう。
 今じゃ余計なことをいっぱい考えてしまって、このざまだ。不必要に考え込んで、混乱して、一番伝えたいと思っている希望も相手に言えず、結果ぐるぐるしてしまう。
 おまけに言うチャンスが巡ってきても、自分ではぐらかしてうやむやにしてしまう。自分を誤魔化したり、その場しのぎで取り繕うのも、今ではお手の物だ。
 本当に思ってる事を伝えるのが怖くて、ただ逃げ回っているなんて。自分の情けなさに、自分で閉口してしまう。

 いつからこうなったんだろうな…。

 こんな『臆病』につける薬があればいいのに。
 生来のものだろうが、大人になる事に育つそれに、溜息を禁じ得ない。

 足元を、乾いた音を立てながら葉が螺旋を描いて舞う。

「…七王さん…」
「…-っッ、」

 圧迫された痛みに、はっとする。
 繋がれた手が、俺の手をぎゅっとしっかりきつく掴んできたのだ。そうして握り込んだ手を引っ張られ、身体ごと有無を言わさず引き寄せられる。

「あいか…」

 不意の急な動きに俺は足元からバランスを崩して、相川にもたれかかるようにして身体がぶつかる。
 肩口に鼻先が接触する――その一歩手前に頬に手が添えられ、上向きに顎を固定される。

「――…ッ!?」

 言いかけていた『わ』の音は、いともたやすく相川の唇に全て呑み込まれた。
 押し付けられるように唇同士が触れ合ったと思った途端、開いた隙間から熱い吐息と舌が瞬時に中に入ってくる。
 相川とキスした瞬間、始めて俺はその時下唇を噛んでいた事に気が付いた。
 馴染みの胸襟に受け止められ、腰に回された手にきつく抱き寄せられる。

「…ん!ンッぅっ…――」

 喉の奥に行くんじゃないかと思うくらい真っ直ぐに舌先が侵入してきたかと思うと、それはすぐさま苛烈さを持って、俺の舌に巻き付いてきた。

 舌の付け根、舌の裏側、上顎の裏。
 次々に強く舌で擦られて、喉の奥で「くぅ…っン」と声にならない声が秘かに生まれる。
 感じる所を擦られると、束の間そこに痺れが留まって、震えが奥から走る。
 あっという間に内部を浸食される。狙って快感を呼び覚ますような、そんな動きを久遠の粘膜は七王の口内に残していく。
 繰り返しなぞられ、頬の内側をねっとりと舐められて、七王の背筋にぞくぞくとした物欲しげな快感が駆け巡る。
 深く口付けられると、足元の力も、意識の全てもたやすく持っていかれるように感じた。
 まばたきの間の僅かな時なのか、それとも時が移ろう長い間ずっと2人こうしているのか、今聞こえるのはただ唾液を繋いで交換する音だけで――。

 酸素が足りなくなってきた七王の頭がふわふわして、気持ちよさで眩む。

「っふ、ん…、ッ、……ふぅ…っつ」

 伝わるのは互いの波打つ鼓動と、まぐあう舌の熱さ。
 水面に映る2人のシルエットは、重なったまま光に反射して揺らめいていた。

「ふ…う…ッ、ん……」

 七王は何度も、震える吐息を吐き出した。
 久遠の庇護から飛び出したそれはひっそりと艶めいた音で、森の中と久遠の耳に静かに溶け込んでいく…。

 久遠は漏らされたそれを愛おしく思いながら、最後に慈しむように唇と中に触れて、柔らかい感触を堪能した。

「…っふ、ッン…」

 密接を解くと、唾液は細い線で2人を数秒の間繋いだ。


 キスしている間に、眼鏡がずれたようで鼻骨に妙な角度で当たって痛い。
 七王がそう感じると、二本の指がすっと慣れた仕草で眼鏡を取り上げた。

「…あ、いかわ…」

 乱れた呼吸に紛れて上ずった声が、『特別』を形作る。
 度が入っていないレンズ越しに見えていた、世界とはまた違う。
 澄み切って濁りがない水晶のように強く輝く目は、確かな熱を宿して七王を見ていた。
 
 瞳の中で陽炎のように何かが浮かび上がり揺れている
 意志の強そうな眉の下、正面から注がれる視線に思わず息を飲んだ。 

「…相川…」

 目に焼きついた。
 心と、細胞のひとつにまで沁みこんだ、相川、だ。
 もう一度、泡のような呟きが立ち上った。


 《続く→》
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